競技人生の中での挫折経験を乗り越えて培った『精神力』 ‐人生や仕事面での活かし方とは

岸田さんとは？

ー岸田 亮太朗（きしだ りょうたろう）さん
小学2年生から野球を始める。中学校ではクラブチームに所属して競技に励むが、高校入学してすぐに「イップス」に。1年弱のリハビリの末見事克服し、競技復帰を果たす。大学では一度野球と距離を置くも、現在はNineForceという社会人硬式野球チームに所属し、仕事と競技を両立するデュアルキャリアとして道を歩む。

スポーツ経験と今

｜岸田さんが野球を始めたきっかけを教えてください。
小学生の頃、野球の体験会に参加する機会があり、バットを振らせてもらったり、キャッチボールさせてもらったりする体験を通して野球に惹かれたのがきっかけです。元々何かスポーツを始めたいという気持ちがあって、漠然とサッカーをやりたいと考えていたのですが、結局サッカーは体験もせず、野球をやることにしました。偶然にも父が野球経験者で、今思うと野球は幼少期から身近な存在だったんですよね。でも父に促されたとかではなくて、野球をやることは自らの意志で決めました。
 
｜現在の仕事はどのようなことをしていますか？
仕事は雑貨や繊維関係を扱うメーカーで営業をしています。自分の担当エリアは京都や大阪がメインとなる関西圏で、私を含め7名の営業チームで全国を担当しています。

自分自身と向き合い続けた高校での競技生活。‐「イップス」を通して得たもの‐

｜野球の体験会がきっかけで野球の道を歩み始めたと仰っていましたが、本格的に野球を始められたのはいつですか？
 小学2年生の時です。そこから高校3年生まで続けていました。大学では野球から離れていたのですが、転職を機に奈良に戻ってきたことをきっかけに競技を再開しました。
 
｜小学校・中学校・高校と、野球一筋で続けていたのですね。
そうですね。中学ではクラブチームに所属していました。小学校高学年くらいからいずれは硬式野球をやりたいと考えていたのと、早くから硬式に慣れておくことで高校でも有利になるだろうと思い、両親にクラブチームで野球を続けることを相談して決めました。自分の望む環境下で競技を続けさせてくれた両親には感謝しています。
 
｜岸田さんご自身の野球に対する熱意と素敵なご両親のサポートがあってこその中学生時代ですね。高校での活動を視野に入れて中学から硬式野球に取り組まれていたとのことで、実際に進学してからの競技生活はどうでしたか？
中学では高いレベルでかなり熱心に野球と向き合っていて、そこで培っていたものを高校で発揮出来たらと思っていたのですが、結果的には高校での生活は自分の競技人生において最もつらい時期になりました。
 
｜つらい時期とは？
高校入学してすぐに「イップス」という、思うように身体を動かせない状態になり、ボールが10ｍ～15ｍくらいしか投げられなくなってしまったんです。個人的には攻撃よりも守備に自信があったので、投げることにおいて飛距離を出すことが難しくなってしまったのは非常につらいものでした。「高校での活躍を見据えて中学時代は頑張ってきたのに、あの時間はなんだったんだろう…。」と、もう野球自体辞めてしまいたいとまで思いました。メンタル的にも良いとは言えない時期を過ごしました。
 
｜夢に見ていた高校での競技生活中で挫折…。実際、高校の3年間はどのように過ごしていましたか？
「イップス」はこれをすれば治る、というような確立された方法がないので、監督をはじめ色んな人に相談したり、自分で試行錯誤を繰り返していくうちに、克服することが出来ました。克服には1年以上かかりましたね。高校2年の秋から3年の春にかけて少しずつ元のパフォーマンスができるようになっていきました。自分と向き合う期間が非常に長く、克服するにはどうしたらいいか、ひたすら自分自身と闘っているような高校生活でした。
 
｜克服に1年以上。それでも諦めず自分自身と闘い続けたその原動力は何だったのですか？
“甲子園に行きたい”という強い気持ちです。小学生の頃からずっとやり続けてきたものが野球だったので、「ここで辞めて今後どうするの？」という想いもありましたし。また、リハビリ中はチームメイトにも色々相談させてもらって、チームメイトから「亮太朗がチームには必要だ」という鼓舞してくれるような励ましの言葉やエールを貰えたのもとても大きな原動力になりました。
 
今も時々「イップス」の症状が出ることもありますが、当時のリハビリやモチベーションを思い出しながら向き合っています。思い込みすぎず、自分なら投げられるといった自信や心の余裕を意識して日々練習に励んでいます。

NineForceとの出会い‐野球と距離を置いて気付いた野球の楽しさ‐

｜NineForceへ加入することになったきっかけを教えてください！
大学に進学し、野球と距離をおくと、生活に刺激が足りないと感じるようになりました。改めて、野球の楽しさに気付いたんです。そういう想いもあって草野球をやっていた時期もありました。社会人になり、転職を機に奈良に帰ってきたとき、ふと硬式野球チームを探してみることにしたんです。そこで友人が所属していたNineForceを紹介してもらいました。そこから試合や練習を見学させていただいて、加入を決めました。
 
｜ご友人の紹介で加入されたのですね。現在の練習場所や頻度はどのくらいですか？
場所は奈良県山添村、三重県伊賀市を中心に、日曜日を練習日として活動しています。12月中旬から1月半ばくらいまでの約1か月はオフシーズンとしていますが、それ以外は各自スケジュールを上手く調整しながら練習に励んでいます。試合ではメンバーの家族はもちろん、地域の人や社会人野球のファンの方なども応援に来てくれるんです。応援やサポートしていただけることの有難さは常に感じていますね。
 
｜NineForceの印象は加入前後で変わりましたか？
だいぶ変わりましたね（笑）。加入前は正直、社会人の硬式野球ってハードルが高そうだなというイメージがありました。実際は和気あいあいとしていて、チームとしての雰囲気も最高なんです。
和気あいあいとしている一方で、練習のオンオフの切り替えはしっかりしています。硬式野球ということもあって、全員が集中して気をつけないと危険を伴います。そういった意識もしっかりしているメリハリのあるチームだと思います。
 
｜岸田さんから見たNineForceの長所を教えてください！
NineForceは高校生から50代まで幅広い年齢層の人が所属していて、年齢問わず活躍できるチームだと思っています。ただ楽しいだけではなく、厳しさとメリハリを持ったモチベーションの高いチームです。練習メニューも監督やキャプテンを中心に全員で考えて工夫しています。野球という競技を楽しみながらも、志を高く持ったメンバーが集まっているとても良いチームです！

仕事も競技も目標を持って着実に。‐両立するからこそ生まれる相乗効果とは‐

｜転職のきっかけを教えてください。
前職は別業界の商社で働いていたのですが、転勤が多く、自分の時間を確保するのが難しいと感じていました。この先のライフプランも中々見通せず、環境を変えるなら今このタイミングかなと思い、約2年前に今の仕事に転職しました。
 
｜現職で3年目を迎える今、ご自身の中で具体的な理想像や目標はありますか？
「お客様から頼りにされるような営業ができるようになりたい」というのは常々思っています。自分だから決めてくれた、という信頼がお客様にとっての決め手になってくれると嬉しいです。そのためにも、お客様それぞれに対する距離の縮め方を工夫しています。コミュニケーションの取り方やアプローチの仕方など、色んなお客様と交流していくことで日々ヒントを得ています。何年目になっても学ぶことが多いです。成約に向けて様々なことを試行錯誤できるのが、今のモチベーションになっています。
 
｜理想を実現するために、様々なことを着実に実行されているのですね。仕事と競技を両立している岸田さんが“デュアルキャリア”として活動する中での気づきはありますか？
体力的な面で言うと日曜日に練習をしてから月曜日を迎えることに対して体のしんどさはあります。それでも、頭はすっきりしています。これは仕事と競技のオンオフをしっかり切り替えながら、どちらも全力でできているからこそだと思います。個人差はあるかもしれませんですが、私の場合は確実に仕事と競技を並行してやっていたほうがそれぞれの効率は上がると思っています。相乗効果ですかね？（笑）

挫折経験から学び得た「精神力」と今後のポテンシャル拡大のために目指すもの

｜今までのスポーツ経験と仕事において、共通して活きているチカラはありますか？
「精神力」です。やはり高校で経験した「イップス」での困難を乗り越えたという経験は自分の人生や仕事の両面において活きているのものだと思います。
 
｜岸田さんにとっての「精神力」とは？
自分の中では「集中」や「粘り強さ」を指すものと定義しています。仕事でお客様との大事な商談の際は何を聞かれても答えられるように、集中して内容を叩き込みます。元々こういった作業は苦手だからこそ、商談ごとにロードマップを引いて慌てずに事前準備を行うように心がけています。この準備が商談に対する粘り強さに繋がっているのではないかと思います。
 
｜今後身に着けていきたいチカラはありますか？
自分が持っているチカラや能力をそれぞれ掛け算できるように、活かせるプラスの要素はどんどん増やしていきたいと考えています。掛け算をすることで、今まで見えなかった部分が明瞭になり唯一無二の存在になると思っています。あらゆる可能性を広げて自分の存在価値を高めていきたいです。

NineForceに所属する一選手として体現していきたいもの

｜今後NineForceというチーム、そしてひとりの一選手として、どう展開させていきたいなど、目標はありますか？
個人的には、社会人硬式野球を始めるハードルの低さを発信出来たらと思っています。私もNineForceに所属する前までは、限られた条件の人しか加入できないんだろうなという漠然としたハードルの高さを感じていました。実際にNineForceに加入してみるとイメージとは全く違うことが分かりましたし、仕事や家庭と両立できるんだよということを積極的に発信していきたいです。ひとりの一選手としても、仕事をしながら野球をすることを心から楽しめているので、デュアルキャリアの良さも合わせて伝えていければと思っています。
 
現在NineForceでは新規メンバーを募集しています。少しでも興味があればチームの公式HPやSNSから是非ご連絡ください！
NineForce公式HP：https://www.9force.net/
NineForce公式Instagram：https://www.instagram.com/nineforce_bc/

スポーツとは“生きていく上で大切なピース”

｜岸田さんにとってスポーツの価値とは？
私にとってスポーツは、”生きていく上で大切なピース”です。競技を通して基本的なマナーも学べますし、チームスポーツであればコミュニケーション能力や協調性も養うことが出来ます。学んだことを競技内だけでなく、仕事や人生に活かせる点も、スポーツの価値ですよね。自分をはじめ、スポーツの価値に気付いたアスリートが、積極的に発信していき、スポーツの良さに気付ける人がもっと増えればいいなと思います。
 
｜最後に読者にメッセージをお願いします。
私は「イップス」を経験したことで、壁にぶつかっても解決するために前向きに粘り強く頑張ることの大切さを学びました。そこでの学びが、今の人生や仕事において活きています。やりたいこと、叶えたいことは諦めずに向き合うべきです。もし、仕事や家庭と競技の両立ができるか不安に思っている方は、一度トライしてみるといいと思います。自分もNineForceというチームに飛び込んでみて、社会人硬式野球のイメージが変わりました。何事も恐れず一歩踏み出してみましょう！

編集後記

「イップス」という壁にぶつかっても、強い気持ちで自分自身と向き合い続けたことで見事克服することができた岸田さん。お話を伺っていると、その経験を通して培うことが出来た精神力は仕事面やチームでの活動など、多方面に活かされているのだと感じました。仕事も競技も、理想や目標を置きながら常に前を見続ける岸田さんの今後のご活躍がとても楽しみです。
 
これからも応援しています。インタビューにご協力いただき有難うございました。