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デュアルキャリアをしているからこそ分かる、バスケットボールの価値とは

バスケットボール 佐野翔太

今回は、Gifu Seiryu Heroesに所属する佐野さんにインタビュー!
コロナ禍の影響もあり、Bリーグ(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)に加入することを断念。
それでも“バスケットボールが好き”という気持ちは変わらず、現在はデュアルキャリアをしながら岐阜清流ヒーローズに所属し選手として活動。仕事と競技を両立しているからこそ見えたことや、チームに対しての想いなどたっぷりお伺いしています。

 ▼インタビューを受けていただいたのはこの方
佐野翔太
幼少期から始めたバスケットボールを大学まで続けBリーグを目指すもコロナ禍で断念。今はデュアルキャリアとして仕事との両立をしながら
Gifu Seiryu Heroesに所属(https://www.seiryu-heroes.com/)し活躍をしている。



バスケットボールを始めたことで変わったものとは

―バスケットボールを始めたのは小学2年生のころですよね。
そうです。最初は親の勧めでしたが、ボールに触れた時から「バスケットボール好きかも!」と思っていました。その気持ちはずっと変わらず、今に至ります。
 
―バスケットボールが好き!と感じるのはどんな部分ですか?
競技性はもちろんのこと、チームで戦うことも好きですね。チーム競技だからこそ学べたことも多くあったと思います。
 
―学べたこととは何でしょうか?
その場で必要な対応をどのようにしたらいいか考え行動することを学んだと思います。
 
―何かきっかけはあったのでしょうか?
小中学生の時に所属していたチームは強豪とは言えないチームでした。新潟のベスト16に出られたら喜ぶくらいのレベルです。その中では得点を取れるメンバーとして活躍できていたので、やれることとやれないことのジレンマにイライラしてしまうこともあったんです。
 
―それが解消できたのはなぜでしょうか?
高校生の時が転機です。いわゆる強豪校に入学し、対戦相手が県レベルから全国レベルになりました。その中で中学の時のような考え方では通用せず、チームスポーツとして何が必要なのかを学びました。
これは自分で気づいた部分と、努力は見てもらえているということを知ったタイミングもあります。
 
―努力が見てもらえていると感じたのはどんな時ですか?
高校では、試合に出られるAチーム、控えのBチームで分かれていました。
入学当初はBチームに参加していて、同級生が自分よりも先にAチームに参加しているのを見て、「このままじゃだめだな」と思いながらも、Bチームであることに気後れをして諦めたくなってしまう部分もあったのが正直な感情でした。ただバスケットボールが好きだという想いと、今自分がやれることをやろうと思いコツコツ毎日練習をしていたところ、高校2年生の秋ごろにAチームへ招集していただきました。その時に諦めず地道でもやってきたことは無駄じゃなかったと思いましたし、努力を見てもらえていたんだと嬉しく思えました。
 
―努力が報われた瞬間ですね。Aチームに入った後も練習はコツコツ重ねましたか?
そうですね。AチームとBチームの練習強度には大きな差があって、Aチームに入れてからも結構苦労しました。もちろんすぐには試合に出られません。練習に耐えて、成果を出すことで、徐々に試合にも出られるようになりました。
 
―厳しい練習を耐え続けられたのはなぜだったのでしょう?
仲間がいたからです。監督も厳しかったですし、練習もハードでした。ただ自分がそこで折れているようでは、弱すぎると思えました。周りに申し訳ないですし、仲間も頑張っているから自分も頑張ろうと思えましたね。厳しい環境だったからこそ、その状況を乗り越えようと仲間が団結したりします。絆が強くなりましたね。
 

 

「バスケットボールが好き」

―いろんなことを乗り越えながらも「バスケットボールが好き」とお話してくださっていますが、佐野さんをそこまで魅了するバスケットボールの良さはどんなところでしょうか?
 
バスケットボールって、身長が必要なのではないか、球技が得意じゃなきゃいけないのではないかと思われる方も多いと思いますが、「楽しむ気持ち」があれば誰でも活躍できるスポーツなのではと思うんです。今プロで活躍している選手の中でも、身長差がある方もいます。それでもすごく活躍されている。それは、なぜかというと“チームスポーツだから”だと思います。これそこがバスケットボールの魅力だと僕は思っていますね。
 
―チームスポーツだからこそ、どなたも活躍できる環境があるのですね。
勿論、戦略やチームの方向性もありますが、練習や試合では自分がどうやったら活躍できるのか考えて動くこともできます。僕も大学生の頃から、頭脳戦の部分を意識し始めました。
 
―頭脳戦は大学の時から意識し始めたのですね。
大学での練習を通じて、高校の時よりできる技が増えてきたんです。その中には、戦術やデータ分析という部分も増えてきました。高校の時はハードな練習やその場の環境についていく事に必死で、「とにかくシュートをして得点を取っていこう」と思ってがむしゃらに過ごしていましたが、大学生になってからは、映像なども駆使して攻め方や守り方をどうしたらいいのか、どうやったらより効率的に勝てるのかなど分析して、日々の練習や試合に取り組んでいました。
 
―映像を活かした練習について詳しく教えてください。
はい、ヘッドコーチとアシスタントコーチがビデオにて撮影してくれて、分析するポイントをピックアップしてくれます。その中で改善していくべきところを分析し、日々の練習や自主練に反映していきます。例えば、自分のフォームの修正であれば、何度も何度も反復練習を繰り返し、自分のあたりまえになるまで頑張っていました。


 
 

Gifu Seiryu Heroesが目指す姿は―

―所属しているチームについて教えてください。
岐阜県初の民設民営アリーナ建設や、スポーツを通した町興しを目指して活動しています。今はチームの体育館を所有していて、練習以外にもスクール事業も取り組んでいます。そんな環境があることがチームの魅力だと思います。
 
―チーム所有の体育館!練習ができる環境が整っていますね。
そうなんです。プロチームではありませんが、実業団としては指折りの体育館施設の良さがあると思っています。トレーニングセンターも24時間使えるので、普段仕事をしている身としては、とてもありがたいですね。
 
―どのような経緯でチーム所有の体育館ができたのでしょうか?
チームが設立された当時は、岐阜県にプロバスケットボールチームがなかったんですね。その中で、社長がプロバスケットボールチームを作って、多治見市やその周辺地域を盛り上げよう!と立ち上がり、周りの企業の方や支援してくれる方が増えて、体育館が完成するに至ったと聞いています。
支援して下さった方や応援している方に恩返しするためにも頑張っていきたいと思っています。
 

「自覚」を持つ仕事と向き合う

―現在は競技と仕事の両立をしてらっしゃるんですよね。
はい、今は製造業の会社で働いていて、バスケットボールと両立をしています。両立は正直、厳しい環境ではありますが、だからこそどちらか疎かになってはいけないと思っています。
仕事は生活していくためという部分もありますが、そこから学ぶことも多くあります。バスケットボールをやらせていただいている環境が当たり前ではないことを自覚して、仕事にもしっかり還元していきたいと思っています。
 
―デュアルキャリアをされていてよかった、と思う部分はありますか?
社員や地域の方々、みなさんが応援してくれるんです。バスケットボールで活躍している姿を見て、勇気をもらったなど嬉しい言葉も頂きますので、そのように思っていただけることがやっていてよかったと思う部分ですね。応援される人でい続けられるように今後も頑張りたいと思います!


 
 

仕事と競技、両方に通ずることは「1人ではできない」こと―

―バスケットボールと仕事に共通することはありますか?
両方とも1人ではできないということですね。1つの工程だとしても、その中でいろんな方が関わっています。物事を1人で遂行や解決することはできないので、「コミュニケーション能力」が双方に大事だと思っています。コミュニケーション能力はバスケットボールで培ったチカラの一つです。そのチカラがあるからこそ、受け身ではなく自分から今あることだけではなく更に違う部分も知りたいと思って行動することができています。
 
―ご自身がコミュニケーション能力を得るためにしたこと、はありますか?
自分の守備範囲を広げることですね。バスケットボールをしているときは、目の前の事だけではなく、1つ先のことを考えながら行動していました。仕事も同じで、今与えられていることだけではなく、その先も考え行動しています。それが何か知るためにも、上司や他の方とお話していく事が大事であり、コミュニケーション能力が必要になってくる部分だと思っています。
 
―これから、更につけていきたいチカラはありますか?
「挑戦するチカラ」です。バスケットボールでは今できないことをチャレンジする、ということもしているので、仕事でも新しいことに挑戦し着実に前に進んでいきたいと思っています。
 

自分の描く未来の姿

―今後、チームはどのような姿を目指していくのでしょうか?
僕自身としては、まずは男子東海・北信越SB-2リーグでの成績を伸ばしていきたいと思います。プロチームにするという最終目標に向かって、まずは現リーグで圧倒的成績を残さければいけません。そのためにも自身の目の前の課題を着実に解消するために、もっと練習して、力をつけていきたいと思っています。
 
―バスケットボール、また仕事でのご自身の目標を教えてください。
仕事では、チームリーダーとして任されたことしっかり遂行して、成長していきたいとおもっています。またバスケットボールでは、プロリーグに行く、そして優勝して、チャンピオンシップでも上位の成績をおさめたいと思っています。もっとバスケットボールが上手い選手になるべく、成長し続けたいですね。



 

佐野さんにとって“スポーツが持つ意味”

―スポーツをしていてよかったと思う部分はなんでしょう?
厳しい時期を超えたからこそ、見える部分があったことですね。僕は大学4年間のうち、コロナ禍が2年間ほどありました。自分自身としては大学3年の頃から進路も考え、「Bリーグに行こう」と思っていました。Bリーグの練習にも声をかけてもらっていたタイミングでコロナが流行し、緊急事態宣言が始まったんですね。全てが止まって、もちろん練習も参加できなくなりました。自分が行きたかったチームも、メンバー募集はしなくなり、進路が閉ざされたんです。
その中でも、自分が選んだ道を成功にするにはどうしたらいいのかを考え、最善の行動ができたかと思っています。誰かに言われて決めたことではなく、自分で決めたからこそ覚悟を持つことができましたね。

―自分で決めた選択には、覚悟が持てますよね。バスケットボールを通じて様々なことを学んだ佐野さんにとって、スポーツの価値とは?
人とのつながりです。
関わり方やその繋がりは、どんどん広がっていっています。高校の仲間は卒業後も仲良く、今も繋がっていますし、社会人では様々なエリアから集まり、国が違う選手もいるので、国境を越えた考え・価値観を学べてすごく面白いです。
 
―いろんな方に関わり、学ぶ機会が多いのですね。
はい、バスケットボールを知らない人にも見てもらえるように、まずは地域で頑張りたいと思っています。例えば、子供と交流できる機会では、その子供たちにもバスケットボールの魅力や選手になったら活躍できる、と思っていただけるような、誰かに感動や人生の転機を与えられるような人間になってきたいです。
 
この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします!
僕はいろんなことがありましたが、バスケットボールをやっていて、よかったと思うことしかありません。そのよかったと思う部分はバスケットボール“だけ”をやっていたらわからなかった部分だと思います。デュアルキャリアをしてみることで、バスケットボールをはじめスポーツの魅力や価値を知ることができます。デュアルキャリアだからこその楽しさ、価値、環境や感情を味わうことができるので、僕はやっていてよかったと思っています。迷っている方や悩んでいる方は一度チャレンジしてみてほしいと思います。


 

編集後記

自覚と覚悟をもって競技と仕事にとりくむ佐野さんのお話は、デュアルキャリアを始めようと考える方の大きなエールになったのではないかと感じました。デュアルキャリアだからこそ分かる、競技の価値がある。それを体現しているのが佐野さんだと感じました。チームとしても飛躍する1年になるかと思います。これからも応援しております。
インタビューさせて頂き、ありがとうございました。

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