すごいぞ、アスリート

採用担当はチャンピオン!自分の道は自分で切り開く格闘家

株式会社日本設計工業 重森陽太 (キックボクシング)

スポーツ経験は、スポーツだけに還元されるものではなく、社会で生き抜くチカラに変換されていきます。
過去にスポーツをしていた、または現在もあるスポーツで活躍している人は、どのようにキャリアを選択して今、輝いているのか。
アスリート自身の経験談から「次の一歩」のヒントを得ていきます。

重森さんについて


WKBA世界ライト級王者
https://shinnihonkickboxing.com/Introduction/shigemoriyota/
KNOCKOUT RED ライト級
https://knockoutkb.com/fighter/shigemori_yota/

5歳からムエタイを始める。
母親の勧めもあり、8歳ごろから毎年タイに試合・トレーニングに行くようになり、その経験から徐々にプロを意識するようになる。 
高校在学中の16歳(プロ認定の最低年齢である高校1年生)でキックボクシングのプロデビューを果たし、18歳で新日本キックボクシング協会1)バンタム級王者に。
大学へ進学後、フェザー級王者となり2階級チャンピオンを達成。
新卒で現在の会社へ就職し、デュアルキャリアをしながら仕事とキックボクシングの両立している。
1)日本で唯一プロスポーツ協会に加盟している老舗団体。
 重森さんはプロスポーツ協会にて、新人賞功労章を受章されています。

努力が結びついた瞬間に―

先日の試合『KNOCK OUT CARNIVAL 2024 SUPER BOUT“BLAZE”』での勝利、おめでとうございます!試合はいかがでしたか?

ありがとうございます!のびのびとやれました!「日本一ムエタイができる選手」が明白になる試合なので、多くの方に期待していただいており、さらに大会自体も大きかったので、勝てて嬉しいです。

試合の詳細はこちら https://efight.jp/result_s-20240623_1508099

実は好きではなかったムエタイが自分の宝に

ームエタイ・キックボクシングを選んだきっかけを教えてください

 小学生の頃はサッカー、体操、水泳、琴など、いろいろなことに触れていました。その中で、ムエタイは痛いし、マイナースポーツということもあり、世間からの評価もされにくい。正直好きな方ではなかったんです(笑)。 それでも選んだのは、家族が一番喜んでくれたからです。毎年タイに行かせてくれたこともあり、習い事の中で一番結果が出ていました。そう思うと、何より家族の笑顔がモチベーションでしたね。


―毎年タイに行っていたんですね!

そうなんです。幼いころからタイに行っていて、言葉も分からないまま試合に出たり、一緒に練習したりしていました。小学2年生の時から毎年、夏休みの1か月間日本人1人でタイのジムに泊まり、現地の選手たちと衣食住を共にしてきました。その経験や考え方が私の人間性にも反映されていると思います。相手に対するリスペクトや謙虚という考えは、まさにビジネスにも共通する部分だと考えています。

自分の道は自分で切り開く

ーキックボクシング・ムエタイを全力で取り組みながら就活もしていたのですか?

そうですね。最終的にはアスリートを採用していない会社に入社しました。就活自体は、自分の魅力を最大限に伝えることと、自分の弱みをどう埋めるかを意識しましたね。自分自身で「こういう働き方をしたい」と伝えて就活していました。今振り返ると、アグレッシブな行動をしていたなと思いますが、やっていてよかったと思います。


―アスリート採用をしていない企業への就職はどのように道を切り開いたのでしょうか?

会社説明会に社長がいらっしゃって、どうしても入りたい!と思い、その場で格闘技と両立したいという想いを社長に直接お話しました。突然のことにも関らず、「一度会社を見学しにおいで」と言ってくださり、見学を経て選考に進みました。 また、試合も実際に観に来てくださいました。


―自身をPRする際、秘訣はありますか?

今思い返せば、自分の弱みをしっかり理解することかなと思います。何ができないかを明瞭化して、その代わりや補填するために何をしているなどを、しっかり伝える事ですかね。


―その自己PRを受け止めた今の会社が、重森さんを迎えてくださったのですね。

会社としては大変だったろうなと思います。今までにない働き方の条件、両立のイメージのすり合わせから話し合いましたし、会社にもたくさん検討していただきました。もちろんアスリート採用のある企業も候補には入っていましたが、入社を決めたのは、社長の人柄とロボットシステムインテグレータの業界に興味を持ったことに加え、アスリートとして応援してくれる会社だと感じたからです。本当にありがたい気持ちですし、これからも活躍して恩返ししていきたいと思っています。


―格闘家の活動で力を入れていきたい分野はありますか?

今は無料の配信コンテンツに力を入れていきたいです!自分のできることや、自分だからこその部分を配信して、ムエタイやキックボクシングの魅力を広げていきたいと思います。以前は努力を表に出すことに抵抗がありましたが、試合を楽しんでいただくためにも、プロセスをしっかり配信することで、試合や結果を楽しみにしていただける環境を作っていきたいと今は考えています。“努力を表すこと”は恥ずかしくない、そう思いますね。


―“努力を表すこと”は、就活にも共通しそうですね

履歴書でも同じですよね。「結果」を述べるだけでなく、その中で何を得たか、何をしたから結果を出すことができたのかを話すことで、自分の人となりが出てくると思います。そして、人に伝えることで言語化能力も磨かれてきますね。とはいえ、自分自身も最初は難しく考えていましたね!自信がなかったんだと思います。


―そのような状況を切り替えられたタイミングは?

『自信を持つ考え方』に変わったタイミングで、切り替えられましたね。
就活を始めた頃は、自分の強みがわからず、自信がありませんでした。「本当に頑張っているのか?」「結果が出なかったらどうしよう?」と不安に思っていました。しかし、5歳から毎日欠かさずトレーニングを続けてきたムエタイのおかげで、努力している自分を認めることができ、ネガティブな感情を払拭できました。
また、たくさん壁打ちをして、長所・短所を見つけていきましたね。長所・短所を知っている競技者は強いと思います。

選手もしながら仕事を両立することの楽しさ―

―今はどのような仕事でデュアルキャリア(仕事と競技の両立)をされていますか?

株式会社日本設計工業で、新卒採用を担当しています。具体的には、合同説明会やインターンシップなどイベント、マイナビへの求人掲載、会社のSNSの運用など様々です。

株式会社日本設計工業
https://www.nissetsuko.co.jp/
株式会社日本設計工業の採用ページはこちら
https://www.nissetsuko.co.jp/recruit/




━1日のスケジュールを教えてください。

朝は自主練習をしてから出勤し仕事をします。その後14時半~17時半ごろまで昼練習に行って、再度仕事に戻る、といったスケジュールです。柔軟な働き方を許容してくれる会社には感謝していると共に、だからこそ結果を出していきたいですね。


━競技のみではなく、仕事と両立する選択されたのはなぜですか?

一番の理由は、身近で現役引退後にキャリアについて悩む人たちを見てきたからです。 正直なところ、デュアルキャリアでなくても競技を継続できたかなと思います。ただ、ずっと現役でいつづけることはできません。そうなった時の「引退する自分」を漠然と考えていました。自分の周りにも、引退が近づくにつれて、将来への不安やお金・社会人スキルの無さから焦りを感じているアスリートがいました。スポーツをすること自体は素晴らしいことなのに、「お金や将来の就職先が心配だから競技をやり切れず引退する」という選択はしたくないと思い、デュアルキャリアの選択をしました。


―デュアルキャリアをすることに不安はなかったのですか?
 
今まで学業と競技の両立もできていたので、仕事との両立もできるのでは?と思っていました。もちろん大変なこともあるだろうなと思っていましたが、継続してきたムエタイ・キックボクシングから得られた自信があったので、不安が先行することはなかったように思います。


━デュアルキャリアを成功させるために大切にしていることは?

仕事も競技も、どちらも全力で取り組みさせていただいていることに感謝の気持ちを持っています。 デュアルキャリアを続けているのは自分の意思なので、辛くなった時にどちらかに逃げてしまうことはできますが、そうなると「どっちが本業なの?」と中途半端になってしまうと思います。「格闘技あるからいいや」「仕事あるからいいや」とどちらかに優先順位をつけることでどちらも中途半端になってしまうことが最もよくないです。「格闘技と仕事の双方があるからできる競技生活」であることへの感謝の気持ちをもって取り組むことを意識しています。


━デュアルキャリアをしていて良かったと思うことはありますか?

仕事を競技に、競技を仕事に、双方に活かすことができる考え方を学べたことが大きいです。格闘技の文化と企業の文化の双方を知ることで良い面と悪い面に気が付きます。その良い面を活かすことで相乗効果が生まれると思います。
一つの場所にとどまるのではなく、多くのことを知ることができるデュアルキャリアをしてみるのもいいのではないかと今では思います。


━どんな考え方が双方に活きたのでしょうか?

ただ行動する時と、意識して行動する時では大きな差があるということです。
スポンサー支援をしていただいている株式会社B・Effect Assetの社長からコーチングの講座を受講させていただいたのですが、その内容が双方に活かされていると思います。例えば、PDCAやOODAはアスリートが常に行っていることですが、しっかり意識してみたらより結果を出すことができました。 試合で勝つためにどんな作戦がいいのか、その作戦を実施するためにはどんな練習をするべきか、ロジカルに考えることができました。


―当たり前にやっていたことに意味を持たせたのですね!

そうですね。見方を変えるだけで、いろんな物事に変化が生まれることにも気づくことができました。時には繋がりのないような部分にも目を向けることで、見えてくる部分がありました。 例えば、試合の時に大きい舞台だから緊張するのではなく、大きい舞台だからこそ大きなチャンスがあると考えることができるように、自分自身にもいろんな強み・弱みがあるんだと再認識できました。


格闘技から得ることができたチカラがある

━重森さんは、自ら進んでいく「開拓していく力」や、前例のない事柄にも「挑戦する力」がすごく強いですよね。

格闘技をしているからこそ身に着いた力だと思います。プロになったのは高校生の時で、その時は「開拓していく力」はあまりなかったように思います。 ムエタイや格闘技はセルフブランディングが大切です。プロになってすぐの頃は、周りの友達がチケットを買ってくれることが金銭的な負担になることも理解していたので、身近で関わりのある人に対してではなく格闘技が好きな方にファンになっていただくことに注力しました。チケットを買って頂くということが難しい場面もありました。その経験から、なぜ売れないのか、自分を売り出してファンになってもらうためにはどんなことをしたらいいか、色々と考えて挑戦してきましたね。その経験から、自ら開拓していく力や挑戦する力が身に着いたのではないかと思います。


―そのチカラはどんな場面で活きていますか?

仕事にも就活にも活きていた部分になります。どのように成長していったのかなどの背景を知ってもらうことの大切さは、就活だけでなく、どんなアスリートにも言えることだと思います。これからは自分自身もSNS等を活用して、より多くの方々に応援してもらえる選手を目指したいです。

『採用担当』と『選手』、これからの自分

━採用担当という立場から、体育会学生に就活のアドバイスをお願いします

「自分の力を過信しすぎないこと」と、「何でも挑戦すること」が大切だと思います。 もちろんスポーツの経験は素晴らしいことですし、試合で結果を残したことや毎日練習に取り組んだことはしっかり言語化するべきだと思います。ただ、輝かしい成績がある人ばかりではないですし、新卒では職務経験が無いことが多いはずです。誰もがゼロからのスタートになるからこそ、何にでもなれるのが新卒の強みだと思っています。業界を広く見て、いろんな仕事に挑戦してみてほしいです。
また、自分の強みをしっかりと理解できている人は、意外と少ないのかなと感じます。スポーツの経験だけでなく、その背景や経験から得た力、自分の強みまで話すと説得力が増すので、いろんな経験をしている体育会学生だからこそ、その経験をしっかりと言語化すると、相手に自分が伝えたいことを伝えやすくなるのではないかと思います。


━今後どのような人物になりたいですか?

仕事面では、会社の未来となる人材採用を担っているので、自分の強みでもある開拓する力やブランディング力を活かして、会社の魅力を伝えていきたいです。
競技者としては、ムエタイ、キックボクシングの文化や魅力を広められるよう、さらに発信しながら活動したいです。



━重森さんにとっての「スポーツの価値」とは?

プレーをすることだけがスポーツの価値なのではなく、スポーツが与える感動や興奮など、心を動かすことが価値だと思います。だからこそ、何を伝えたいかを考えながら、ムエタイ・キックボクシングを通してたくさん挑戦したいと思っています。


編集後記

幼少期からムエタイに取り組み、数々の困難を乗り越えてきた重森さんの経験は、多くの人の心を動かすものです。特に、デュアルキャリアを選択し、仕事と競技の両立を実現しているだけでなく、自分の強みを最大限に活かし挑戦を続ける姿は、ファンはもちろん、多くのアスリートにも知ってほしい内容でした。
また、心を動かし感動や興奮を与えるための活動のひとつとして、SNS等を活用し、ファンとのつながりを大切にしている姿勢も印象的でした。 重森さんの今後の活躍がますます楽しみです。
インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

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